親族の衣裳は和装で統一したい、と新郎新婦様から打診があることや、着物で出席を考えている方もいらっしゃるでしょう。その時に困るのが、何を着ていけばいいのかということです。
本記事は元ウエディングプランナーが和装をする際の注意点や選び方、親族の当日の役割などを紹介しています。正しい着物が選べるのはもちろん、親族の役割についても理解が深まる内容です。
選び方が分かれば難しいことはありません。さっそくレンタルや、コーディネートを考えていきましょう。
結婚式に相応しい着物の格について
結婚式に参加する際の服装は準礼装が基本です。フォーマルウエアには3つの区分があり、間違えると冷たい視線を感じるかもしれません。
また、新郎新婦様と立場が近ければ近いほど服装の格も上げます。招待された側よりも招待した側の方が格が高くなるイメージです。
招待された側の場合は、服装の格が高くなりすぎないように注意しましょう。
各区分に当てはまる着物について以下に紹介していきます。
●正礼装
正礼装は最も格が高い服装です。一部の特別な人だけが着るものという認識で問題ありません。
▼新郎新婦様の衣裳
- 白無垢
- 色打掛
- 引き振袖
- 黒の五つ紋付袴
新郎新婦様が着るのはもちろん正礼装です。
▼ゲストの衣裳
- 黒留袖
- 色留袖(五つ紋)
- 振袖
- 色無地(五つ紋)
ゲストが着用する正礼装の着物としては上記が挙げられます。紋の数が多いほど服装の格も上がるので、数を間違えないように気を付けてください。
五つ紋が最高位になり、両胸・両肩・背中に紋が入ります。紋は家紋がベストではありますが、誰でも使える通紋が入っていることが多いです。家紋シールを貼るという手もあります。
●準礼装
正礼装に準じた服装が準礼装です。着物では以下が当てはまります。
- 色留袖
- 訪問着
- 色無地(三つ紋)
友人として招待された場合は、上記を参考にコーディネートしてみましょう。訪問着は華やかなデザインのものも多く、会場が明るくなります。
色留袖はおしとやかなデザインが多く、上品にまとめたい時におすすめです。
●略礼装
平服でお越しくださいと指定があった際には略礼装が目安になります。着物では以下が略礼装にあたるでしょう。
- 付け下げ
- 色無地(一つ紋)
親族の場合は、基本的に着ていく機会はありません。カジュアルな結婚式で、友人としての参加であれば着ることもあるでしょう。3つの区分の中では一番カジュアルです。
立場別で解説! 親族の衣裳
親族の装いは、新郎新婦様と関係が近いほど格を高くします。新郎新婦様、お二人の親御様が一番格の高い服装になるように気を配りましょう。
また、既婚か未婚かで着ることのできる着物に違いがあるので、気を付けてください。
新郎新婦様との関係性、既婚・未婚が何を着るかの判断ポイントになります。
黒留袖 | 正礼装 | 既婚 | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
色留袖(五つ紋) | 正礼装 | 既婚・未婚問わず | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
振袖 | 正礼装 | 未婚 | 姉妹、いとこ |
色無地(五つ紋) | 正礼装 | 既婚・未婚問わず | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
色留袖 | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |
訪問着 | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |
色無地(三つ紋) | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |
●主役に近い人を立てる
目安としては2親等以内の親族が正礼装をしましょう。それ以外は準礼装を目安に装います。
また、新郎新婦様との関係が近い人ほど服装の格が高くなるようにしてください。そのため母親が黒留袖を着ない場合は、その他の親族は黒留袖の着用を控えるなどの配慮が必要です。
●和装で気を付けたいポイント
和装の際は、アクセサリー類は付けないのが基本となります。腕時計も結婚式の場では付けませんし、和装の場合も付けないのでしない方がよいでしょう。
また、動く時は以下のことを意識すると美しい所作に見えます。
- 歩く時は小幅でゆったりと動く
- 階段では足を上げすぎないように登る
- 腕を上げない
- 手を伸ばす時は袂を押さえる
着物に慣れていない人がほとんどですから、当日の動きがきごちなくならないように事前にイメージトレーニングするのがおすすめです。
和婚の時に気を付けること
新郎新婦様も和装をする場合、洋装と同様に主役と被る衣裳は避ける必要があります。白を基調としたデザインや、柄が被ることは避けてください。
着物の柄はどれも似たようなものと思われるかもしれませんが、吉祥柄でも組み合わせは無限にあります。被らないようなデザインを探すことは難しくないでしょう。
振袖の場合は豪華で派手な柄が多く、被りやすくなっています。花嫁と仲が良く事前に衣裳の色や柄を聞けるのであれば、聞いたほうがいいでしょう。
難しければ親御様に探りを入れると分かるかもしれません。また、花嫁よりも目立ちそうであれば別の着物への変更も視野に入れてください。
●よくある花嫁衣裳
花嫁衣裳としてよく選ばれるのが、白無垢と色打掛です。色打掛は赤色が人気なので、赤色の着物を着ていくのは控えましょう。
黒色も格式が高い色で、大振袖を着る場合には黒色も選ばれる確率が高いです。ブルーやグリーンのカラーであれば被る心配はほとんどありません。
色打掛はおめでたい柄で金糸なども使った豪華絢爛な柄のものが多いです。吉祥柄の着物の場合は少し注意しましょう。
●髪型
洋装と同じく、生花・造花は花嫁の特権なので避けます。ヘアスタイルも降ろしたままではなく、アップへアで出席しましょう。
せっかくだからと新日本髪に挑戦したくなるかもしれませんが、新婦様よりも目立つ可能性があるので、洋髪にしてください。
ヘアアクセサリーも控えめなものをおすすめします。
振袖を着る時の注意点
振袖を着ることができるのは未婚の若いうちだけです。目安としては20代のうちのみとなり、歳を重ねたら色留袖などを選びましょう。
成人式用に仕立てられたものは豪華なデザインが多いので、花嫁より目立ってしまわないかは要チェックです。
●袖の長さ
振袖は袖の長さで3つに分類することができます。
- 大振袖
- 中振袖
- 小振袖
成人式のために仕立てるのはだいたい中振袖です。卒業式の袴に合わせるのは、ほとんどが小振袖となります。
大振袖は引き振袖とも呼ばれ、長い裾を引きずって歩くのが特徴の婚礼衣裳の1つです。打掛と違い帯を見せることで引き締まって見え、人気があります。
成人式用の振袖であれば、中振袖の可能性が高いので気にする必要はありません。ただ背が高いと大振袖で仕立てることもあるようです。念のため確認しておいて損はないでしょう。
花嫁が着用しないとしても、大振袖は婚礼衣裳にもなるのでゲストの立場では着ない方が無難です。
●リメイクの案
振袖は袖を短く切って訪問着にリメイクすることもできます。未婚でしか着れないので、結婚後に仕立て直す方が多いようです。
袖のデザインによっては難しく、手間と料金もかかりますが、長く着ることができます。気に入っている振袖があるならば、何度も着れるようにしてみてはいかがでしょうか。
親族としての振る舞い
親族はゲスト側ではなく、ホスト側の立場です。そのためパーティー中にも特別な役割を担うことがあります。
親族ということでゲストからの目線もあり、羽目を外しすぎないように気を付けてください。新郎新婦様の面子をつぶすようなことがあっては、今後の付き合いに影響を及ぼすでしょう。
主に役割があるのは親御様ですが、他の親族も油断できるわけではありません。
●親の役割
新郎新婦様との関係が一番近く、役割も多いです。会場にやってきたゲストや親族、スタッフへの挨拶や挙式中に出番があることもあるでしょう。
忙しい新郎新婦様に代わって、一部の役割を担っているようなイメージです。
●兄弟・姉妹の役割
親御様ほど直接的な役割を振られることは少なく、サポートに回ることになるでしょう。新郎新婦様、ひいてはゲストがパーティーを楽しめるようにさりげなく気を配れるとなおよいです。
●その他の親族の役割
何か役割を求められることはほとんどありません。ただ、ホスト側であるという意識は持って行動する必要があります。
新郎新婦様の退場後、会場を後にするのは最後にするなどちょっとした心配りは必須でしょう。
着物で呼ばれても大丈夫
結婚式に着物で呼ばれた際に、何を着ていけばいいか、何に気を付ければいいかを紹介しました。
親族の衣裳を着物で揃えることも珍しくありません。いとこなど少し関係性が少し離れていても、既婚・未婚を基準に準礼装の着物を選べば大丈夫です。
当日の作法や、親族としての動き方も難しいことはありません。羽目を外しすぎないように、おしとやかにパーティーを楽しんでください。
ぴったりな着物が見つかり、当日も楽しめることを祈っています。
黒留袖 | 正礼装 | 既婚 | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
色留袖(五つ紋) | 正礼装 | 既婚・未婚問わず | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
振袖 | 正礼装 | 未婚 | 姉妹、いとこ |
色無地(五つ紋) | 正礼装 | 既婚・未婚問わず | 母、叔母、伯母、祖母、姉妹 |
色留袖 | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |
訪問着 | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |
色無地(三つ紋) | 準礼装 | 既婚・未婚問わず | 叔母、伯母、姉妹、いとこ |