式場によって音楽の使用制限はさまざまですが、CD原盤を持ち込めば手続きなしでBGMとして使えると案内された方もいらっしゃるでしょう。なぜスマートフォンからの再生はできないのでしょうか。また、BGMについてはリストから選ぶように言われた新郎新婦様もいらっしゃるでしょう。この案内の違いはどこから来るのか疑問に思ったことはありませんか。全ては音楽を正しく守るために、制限がかけられているからこそ起こることです。混乱しがちな著作権についての話を、なるべく分かりやすく3ステップで説明しました。
まずは著作権と著作隣接権について紹介します。次に説明するのは、それらに含まれる権利のうち、演奏権と複製権についてです。最後にCD原盤を用意するように言われる理由、という流れになります。JASRACやISUMという著作権に関わる団体についても触れ、CDがない場合やリスト外の曲を使用したい場合にも役立つ情報をまとめました。使用したいBGMが使えないときにどうすればいいのかの道しるべにもなれば嬉しいです。
著作権と著作隣接権について理解すれば、なぜコピーではいけないのか、式場によって案内が違う理由が分かります。詳しいことはプランナーに直接確認しつつ、本記事で結婚式と著作権について知ってもらえれば幸い
です。著作権を侵害せずに、正しい音楽の利用方法で理想のウエディングをあげてください。
音楽の使用に制限があった!
結婚式での音楽の話って少し難しいですよね。
何でも使えるのかと思いきや、意外とハードルがあります。
「ただ流すだけじゃん!」なんて思う新郎新婦様もいらっしゃるかもしれません。
ウエディングと音楽は切っても切れない関係にあります。
無音の瞬間は少なく、いつも何かしら音が流れているといっても過言ではありません。
そして音楽にも「著作権」という切っても切れない権利が付いて回ります。
この著作権が楽曲の使用を制限させているのです。
ウエディングシーンで楽曲を悪用しようなんて人は恐らくいませんが、きちんと曲を守るために手続きが必要になっています。
本記事が音楽という財産を守るための理解に繋がれば幸いです。
なるべく分かりやすく著作権と結婚式での楽曲使用について紹介していくので、最後まで目を通してみてください。
結婚式は私的利用の範囲外
著作権について、詳しくは知らなくともなんとなくは分かっているという人は多いでしょう。
著作権は簡単に言えば創作物を守るための権利で、他人が好き勝手することはできない、という権利です。
とはいえ、スマートフォンに音楽をダウンロードしたり、演奏したり、カラオケで歌ったりできます。
友人におすすめの曲を聞かせた経験もあることでしょう。
勝手に再生していることになりますが、これらが問題になることはありません。
なぜなら私的に楽しむ分には問題ないからです。
結婚式で曲を流すことも、友人に聞かせるのと同じような気がしてしまいますが、そんなことはありません。
ウエディングで曲を流すのは私的利用の範囲を超えていると判断されます。
サービスの一環として音楽を提供しているので商用利用となり、使用に申請が必要になるのです。
しかし、ウエディングと音楽は切り離せませんから、原盤CDだけで曲を再生できる式場や、手続きを代理で行う団体もあります。
まずは、結婚式での音楽使用は私的利用の範囲を超えて、商用利用となるため手続きが必要になるということを頭に入れてもらえれば幸いです。
- 結婚式での音楽使用は商用利用となる!
結婚式と著作権の話
さっそく、結婚式と著作権の話へ移っていきましょう。
なぜCDの原盤を用意しなければいけないのかを3ステップで紹介します。
1.著作権について
2.結婚式に関わる音楽の権利
3.CD原盤がいい理由
そもそも著作権って何? というところから、ウエディングシーンで関わる権利、そして原盤を指定される理由というステップになっています。
著作権にはさまざまな権利が含まれますが、ウエディングの音楽使用シーンに限って紹介しますね。
引っかかるのはBGMとして使用する場合、演奏する場合、ムービーに入れ込む場合、録画する場合です。
1.著作権について
まずは楽曲が持つ権利について、から始めます。
著作権はもちろんのこと、もう一つ著作隣接権という権利も持っているのです。
どんなシーンで曲を使用するかで、どちらの権利を持っている団体に申請が必要なのかが変わって来ます。
それぞれ見ていきましょう。
創作者が持つ権利です。
楽曲でいえば作詞者・作曲者が持っています。
人が作ったものを他人に勝手に使わせない権利といえるでしょう。
複製権や演奏権、展示権、譲渡権、公表権など多くの支分権が含まれます。
創作者ではないが、作ったものを広める役割を果たしている人が持つ権利です。
楽曲でいえば、アーティストやレコード会社が持っています。
作りだした音とその録音データに対して権利を持っているようなイメージでしょう。
指名表示権や放送権、複製権や貸与権などの支分権が含まれます。
手続きにあたって、著作権をもつ作詞者らと著作隣接権を持つレコード会社らのどちらか、または両方へ申請を出すことになります。
楽曲の権利には大きく著作権と著作隣接権があって、それぞれ保有している人が違うということが分かれば大丈夫です。
2.結婚式に関わる音楽の権利
さて先の項目で、楽曲の権利は著作権と著作隣接権の2つあることを紹介しました。
この2つは創作物にまつわる多くの権利を含んでいます。
著作権と著作隣接権は権利の集合体の名前なのです。
たくさんあって困ってしまいますが、ウエディングでの利用に関係があるのは「演奏権」(著作権)と「複製権」(著作権・著作隣接権)のみになります。
演奏権はその名の通り、曲を演奏したり再生したりできる権利です。
複製権も名前そのまま、曲をコピーしてもいいという権利になります。
曲のデータをスマートフォンへダウンロードすることも複製です。
具体的には以下のシーンで、各権利が関わってきます。
・演奏権→BGMとして使用したい
・演奏権→演奏したい
・複製権→ムービーに入れ込みたい
・複製権→録画したい
お金が発生する状況で再生・演奏することは、演奏権の侵害に該当します。
演奏権の所有者は著作権者です。
著作権はJASRACが管理していますので、JASRACが申請窓口となります。
BGMとして使用する、演奏するという場合であれば、演奏権者からだけOKをもらえば大丈夫ということです。
私的に楽しむ目的以外に、曲をダウンロードしたり、映像にBGMとして入れることは複製権の侵害になります。
結婚式に使いたい曲を1つのCDへ統合することも複製権の侵害です。
また、式の様子を録画する場合も流れている曲と一緒に収録するので複製行為に当てはまります。
ご家族やご友人が私的に楽しむために録画することは問題ありません。
複製権の申請は著作権者と著作隣接権者へ行います。
よし分かった電話してくると思ったそこの方、複製権の許可は個人相手にはなかなか降りるものではありせん。
ISUMを介して、利用申請を行うことになります。
ISUMは著作権者・著作隣接権者へ一括申請・一括処理を行ってくれる団体です。
ISUMへの申請はブライダル事業者からのみ可能で、個人での申請はできませんので式場やムービー作成会社へ相談し、申請してもらいましょう。
結婚式で音楽を使うときは、以下が分かっていれば大丈夫です。
- 演奏権と複製権が関わっている
- 演奏権は著作権者がもつものである
- 複製権は著作権者・著作隣接権者がもつものである
3.CD原盤がいい理由
最後にCD原盤を用意してほしいと言われる理由について説明します。
先の項目で話が出ましたが、曲をコピーして商用利用するには複製権の申請が必要です。
複製権は著作権者・著作隣接権者のどちらも持っていますので、手続きが多くなりますし時間がかかります。
この複製権の手続きを省けるのが、オリジナル盤を使用することなのです。
原盤であればどこにも複製していませんから、演奏権の申請だけでBGMとして利用できます。
これがオリジナル盤を用意するように言われる理由です。
ちなみにレンタル落ちのCDは使えない式場が多いので、使わない方が賢明な判断といえるでしょう。
中古のもの、友人から借りたものは問題ありません。
配信のみの曲を使用したい場合、少し苦労することが予想されます。
CDは出さず配信のみという形態は割と最近のスタイルですので、整備が追い付いていないような状況です。
ただ、配信限定の曲であっても複製権の手続きを行ってくれるISUMで許可が取れた曲は増えています。
まずはプランナーへの相談と、ISUMに登録されているかをチェックしてみましょう。
式場毎に対応が違う理由
式場によって、リストからしかBGMが選べなかったり、CD原盤を持ち込めば好きな曲を流せたりしますが、この違いは何でしょうか。
ポイントは新郎新婦様の手続きの有無です。
リストから選ぶタイプの式場は、リスト外の曲については演奏権の手続きが必要になるため案内していないパターンがほとんどです。
出されたリストはあらかじめ許可の取れている曲のリストということになります。
一方オリジナル盤を持ち込めばOKな式場は新郎新婦様の手続きなしで曲を流すことができます。
これは、式場とJASRACが包括的に契約を結んでいるからです。
リストから選んでいようとCDを持ち込もうと、演奏権の申請がいることに変わりはありません。
ただ、式場が「施設として音楽を流すこと」をJASRACと契約していれば、お二人がいちいち手続きする手間が省けます。
これが原盤を持ち込むだけで曲を使用できる理由です。
まとめて契約しているので、逐一の手続きなしで流すことが可能というわけですね。
また、リストからしか選べない式場でも、手続きを自分達でするなら流してもいいという場合もあります。
式場によって対応はさまざまなので、確認してみてください。
どうしても流したい音源がある場合は、自分達で手続きすることも視野に入れましょう。
正しく音楽を使用しよう
結婚式でCD原盤が必要な理由について、理解は深まりましたでしょうか。
本記事の知識をベースに、もう一度プランナーに著作権について聞いてみるとより納得できるかもしれません。
式場選びに迷っているプレ花嫁様は、音楽の使用可否も比較点に加えてみてください。
こだわりがある場合は、式場がJASRACと包括契約を結んでいるか、ISUMに登録しているかを事前に確認することがおすすめです。
式場により対応は異なりますが、どの式場も著作権を守りながら音楽を使用しています。
正しく楽曲を使用する理解への一歩になれば幸いです。