結婚式では親の衣裳についても考えなければいけません。
親は招待する側の立場であり、ゲストに失礼のないように正装する必要があります。
母親は黒留袖を選ぶ方が多いでしょう。
「黒留袖ってどんなもの?」
「黒留袖の着こなしのルールやマナーは?」
など、めったに着る機会のない黒留袖をどのように選んだらよいか迷ってしまう方もいるかもしれません。
新郎新婦さまと衣裳合わせに行くなど、母親の衣裳についてもおふたりがリードして両家でバランスよく選びたいところですね。
本記事では、結婚式での母親の衣裳である黒留袖について、選び方から着こなし方までご紹介していますので参考にしてくださいね。
母親が着る黒留袖とは何か
結婚式で新郎新婦さまの母親が着る衣裳は黒留袖が一般的です。
黒留袖は格式の高い衣裳であり、着ることができるのは新郎新婦さまと立場の近い親族に限られます。
そのため、両家の母親以外におばも着用の機会があるでしょう。
まずは黒留袖がどういった衣裳かご紹介します。
黒留袖は着物の正礼装
黒留袖は結婚している女性が着る衣裳の中で一番格式の高い「正礼装」で、結婚式・披露宴以外で着ることはあまりありません。
五つ紋と呼ばれる、背中、左右の胸元、左右の袖の後ろ側の5箇所に家紋が入っているのが正礼装の特徴です。
昔は嫁入り道具として家紋入りの黒留袖を持っている方も多かったのですが、現在はレンタルで用意することが多くなりました。
レンタル衣裳の五つ紋には、誰でも使える通紋が施されています。
上半身には柄がなく、裾にかけて縁起のよい絵柄が前から後ろまで繋がって描かれているのも特徴の1つ。
前から後ろまで柄を合わせる高度な裁縫技術が必要なため、着物としての格も高くなります。
▼チャペルやモーニングコートと合わせても大丈夫
黒留袖は和装なので、チャペルでの結婚式で着ても良いのか不安になるかもしれません。
結論からいうと、気にしなくても大丈夫です。
洋風の会場はもちろん、父親の衣裳であるモーニングコート、新郎新婦さまの洋装と合わせても問題ありません。
結婚式スタイルの多様化によりおふたりや父親は洋装を着るようになりましたが、母親は黒留袖で正装するのが主流です。
その他の着物について
結婚式で着る黒留袖以外の着物についてもご紹介します。
それぞれの着物の特徴や、誰が着るのか参考にしてくださいね。
1.振袖
振袖は足元まである長い袖と、1枚の絵のように全体にわたって描かれた華やかな柄が特徴で、成人した未婚女性の正礼装です。
結婚式では未婚の友人や姉妹が着る衣裳ですが、友人の中でも受付やスピーチを頼まれているなど役割がある時におすすめ。
また、新婦さまと被ってしまわないように婚礼衣裳として振袖を着る予定がないか確認しておくとよいでしょう。
2.色留袖
色留袖とは、既婚か未婚かを問わず正礼装として着用できる黒以外の留袖のこと。
黒留袖と同様に上半身は無地で、帯より下側に絵柄があります。
黒留袖よりも格が低い正礼装として位置づけられるため、親族が着ていることが多いです。
五つ紋は正礼装、三つ紋(背中と左右の胸元)は準礼装、一つ紋(背中のみ)は略礼装として位置づけられています。
3.訪問着
訪問着も留袖や振袖のように縫い目をまたいでも絵柄が繋がっていますが、上半身にも柄があるのが特徴です。
留袖に次いで準礼装や略礼服の位置づけになり、未婚でも既婚でも着用できることから着用場面は幅広いといえます。
友人として参加する場合、色留袖でも訪問着でも問題ありませんが、留袖の方が格式が高いため親族と間違われる可能性も。
また訪問着は着席した際に上半身の柄が見えて華やかなので、色留袖よりも訪問着がおすすめです。
黒留袖のエチケット
ここからは黒留袖の選び方についてご紹介します。
黒留袖を着用した時に正面にくる絵柄の位置や面積、色使いによって雰囲気が大きく異なるため、柄選びが重要なポイント。
柄の出方で似合う年齢層も変わってきますので、注意しましょう。
黒留袖の選び方:おめでたい柄を選ぶ
黒留袖には鶴や亀、御所車や扇、松竹梅など古くから伝わる縁起のよいモチーフが描かれています。
結婚式にふさわしいおめでたい柄を選ぶとよいでしょう。
また柄に込められた意味合いを知っていると、選ぶときの参考になりますよ。
意味 | 着物の柄 |
夫婦円満 | 鴛鴦(おしどり)、貝桶、貝合わせ、鶴、蝶など |
不老長寿 | 鶴、亀、亀甲、松竹梅、牡丹、菊など |
子孫繁栄 | 葡萄、鳳凰、瓜など |
栄華栄達 | 七宝、宝尽くし、扇など |
▼柄が大きく、白っぽくなるほど若々しい印象に
柄が大きく、黒地の面積に対して柄の面積が多いと全体的に白っぽくなり若々しい印象になります。
また柄の色使いが鮮やかで彩りが豊かなほど、若い方向けのデザインといえるでしょう。
反対に柄の面積が少なく裾にすっきりとまとめられたデザインは、新郎新婦さまの祖母など年配者向けの着物です。
年代に合わせた柄を選ぶことで、年相応で落ち着いた大人の品格を表すことができるでしょう。
和装・洋装問わず両家で服装の格を揃える
新郎新婦さまの親という立場上、最上級の礼服でゲストをお出迎えするのがふさわしいでしょう。
そして洋装・和装に関わらず、両家の格を揃えることが重要なポイント。
▼黒留袖に釣り合う洋装の正礼装とは
どちらかの母親が黒留袖を着るが、もう片方の母親は洋装を希望する場合、格を揃えることが大切です。
つまり和装の正礼装である黒留袖と同様に、洋装でも正礼装を着用するということ。
洋装の場合は、昼の正礼装であるアフタヌーンドレスまたは夜の正礼装であるイブニングドレスのどちらかを選びます。
アフタヌーンドレスは肌の露出を控えることがマナーとされ、胸元や肩を出さずスカート丈もくるぶしほどです。
反対にイブニングドレスは肌を露出する方が良いとされ、胸元や背中などが開いたデザインが特徴。
光沢ある生地が大人っぽい、くるぶしよりも丈が長いドレスです。
式場でレンタルの場合:柄被りに注意
両家の母親とも黒留袖を式場でレンタルする場合には、柄が被ってしまわないように気を付けましょう。
いくつかある黒留袖の中でも年代に合う品の良いものをと考えると、選択肢が近くなる傾向にあります。
お互いの母親がどのような柄の黒留袖を着用予定か、あらかじめ情報交換しておくのがおすすめ。
黒留袖のアクセサリーと小物の選び方
黒留袖を着る時にはヘアスタイルやアクセサリー、メイクや小物などのコーディネートも考える必要があります。
黒留袖に合わせた小物類をご紹介しますので、コーディネートの参考にしてくださいね。
髪型と髪飾りは落ち着いた品のあるもの
黒留袖は格式の高い品のある衣裳なので、髪型や髪飾りも華美になりすぎず、落ち着いたテイストのものを選びましょう。
着物にはまとめ髪が基本で、トップに少しボリュームをつけつつ、結い上げた面が美しく艶やかだと品良くまとまります。
後れ毛が出ていたり毛先を遊ばせたり、ふわふわと巻いた髪でゆるくまとめるヘアスタイルは黒留袖には適していません。
髪飾りはパールやべっこうのかんざしなど落ち着いた印象のものが黒留袖に似合うでしょう。
和装に合うメイクとは
和装は普段のメイクよりもしっかり目を意識するのがおすすめですが、派手になりすぎないように注意したいところ。
和装に合うしっかり目のメイクとは色味をたくさん使う華やかなものではなく、ひとつひとつの行程を丁寧に行ったメイクです。
目元はアイラインを引いて際立たせつつも、アイシャドウはパールやセミマットで控えめな色使いにしましょう。
眉毛はアーチを描いたやわらかい形を意識して、普段のメイクよりもボリュームや立体感のある眉毛で着物に負けない顔立ちに。
口紅は落ち着いた色味を選び、リップラインを丁寧に引くとフォーマルにふさわしいメイクになるでしょう。
草履・バッグの合わせ方
黒留袖に合わせる草履やバッグも、正礼装にふさわしい格の高い金・銀のいずれかにしましょう。
草履は鼻緒と台の部分が同じ素材で、かかとの高いものが格式高いとされています。
バッグは艶と光沢のある生地で、帯と雰囲気や色味が似ている物をコーディネートするのがおすすめ。
黒留袖をレンタルする場合には、草履とバッグも合わせてレンタルするとよいでしょう。
和装小物は白色が基本
着物を着用する際には、さまざまな和装小物が必要なのはご存知ですか。
下着として着る肌襦袢、黒留袖の下に着る長襦袢、首元からのぞく半衿、足袋などは全て白で揃えるのが正礼装としての決まりです。
淡い色合いの長襦袢や、色のついた半衿はマナー違反になりますので注意しましょう。
また帯に使う帯締めや帯揚げなども正礼装の際には、白・金・銀以外は使いません。
まとめ:結婚式で母親が和装する場合は、黒留袖を着よう
結婚式で新郎新婦さまの母親が正装する際は、黒留袖がふさわしいでしょう。
既婚女性の和装の中で最も格式高い黒留袖を着ることは、ゲストに失礼がないようにというおもてなしの心の表れです。
しかし黒留袖を着る機会は少ないので、どのように選んだらよいか戸惑ってしまうかもしれません。
本記事では、黒留袖の選び方と着こなし方、髪型や和装小物のコーディネートなど黒留袖に関することを幅広くご紹介しました。
新郎新婦さまの母親として、マナーを守って黒留袖を着こなしてもらいたいですね。